大阪の教科書
- 先日買ったもの。ことば面文化面盛りだくさんで面白い。
- 作者: 橋爪紳也,創元社編集部
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 単行本
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- 以下、少しメモ。
「関西弁は球界標準語」
(略)球界における関西弁の普及率はかなり高い。いわゆる野球用語としても「ほうる(投げる)」「ど真中」「ちょい高め」などがあり、「カーブがすっぽ抜ける」という表現も、どことなく関西らしい。
(略)金田正一や川藤幸三といった関西出身でもないのにコテコテの関西弁風の言葉を使う野球解説者の存在や、本人は使っていないにもかかわらず、関西出身の監督のコメントを捏造に近いくらい誇張した関西弁でもって載せるスポーツ紙など、さまざまな理由によってその浸透度は高められてきた。
こうなるにいたった第一の理由としては、球界で活躍してきた人物に強豪校の揃った関西の出身者が多いことが挙げられるだろう。他業界でも、たとえば文楽の標準語は大阪弁、歌舞伎の和事は上方語、落語は江戸弁と大阪弁、面白いところでは軍隊言葉のいくつかは上長州(山口県)にルーツがあるとされ、つまりどの世界でもある地域独特の言葉がスタンダードになることは珍しいことではないのだ。(115頁)
- 「ほうる」*1とかはいかにも方言と思ってはいたが、それは阪神あるいは3チャン的なノリがゆえと勝手に片づけていた。それしかほぼ観たことがないので気付きにくい。でもたとえば、WBCとかの東京弁の解説の中に「ほうる」とか聞こえて「うわっ」と思ったこともあったような気もする…。
- それにしてもこの本、↑こういった記述がありながらも、参考文献に『役割語』がない。残念。
大阪ゆかりの作家や作品が、過去の著名な大阪の作家とならべて論じられるケースは多い。時代を超えて流れる大阪的なものがあるというのだ。発言者は当の大阪人であることが多いが、外からもしばしば同様の指摘がある。『ポトスライムの舟』に対して芥川賞選考委員の高樹のぶ子が「視線を低く保つ関西人の気質と言葉使いが、うまく時代を掴まえた」(「文藝春秋」2009年3月号)と選評で述べたのが、一例である。(195頁)
- ↑この本、まだ読んでないから読みたいな。ずっと「ポスト・スライム」【⇒参考】と思ってたけど*2。
大阪を舞台にし、主人公たちが大阪弁で会話する漫画には、共通の雰囲気がある。つくりごとのドラマではない、現にそこに生きている人間のお話であるという、実感のようなものだ。大阪を舞台にすることで、見栄や体裁やタテマエといったものは、リアリティのない絵空事に見えてくる。それらを取りはらった後の、ナマの人間の欲望や感情が、登場人物が大阪の街を歩き、大阪の人間同士で会話しているうちに、自然とむき出しになってくる。(207頁)
- 「雰囲気」「実感」「見えてくる」というのがそれらしい。ネイティブとノンネイティブとの印象のズレが難しいけど。